| K812-Y3 | K712 PRO-Y3 | K701-Y3 | K702-Y3 | K612 PRO-Y3 |
K812-Y3 |
K701シリーズのさらに上位、AKGモニターヘッドホンのフラッグシップモデルがこの「K812-Y3」です。その外観は、K701シリーズとかなり異なった独特のもので、アルミダイキャスト製のフレームやメッシュヘッドバンド、3Dデザインのイヤーパッド、LEMOコネクタ採用の着脱式ケーブルなど、現代的なデザインに纏め上げられています。また、装着感と耐久性に充分に配慮されていて、実際の使い勝手も良好です。
音質についても、高い解像度感、フラット&ワイドな帯域特性など、K701シリーズとは一線を画すクオリティを有しています。特に解像感の高さが顕著で、最低域から高域まで、まるで顕微鏡を覗いているかのようなきめ細かいディテール表現を持ち合わせています。
サウンドキャラクターもK701シリーズとは趣が異なり、どちらかというと客観的な表現となっています。どんな楽器であっても脚色のない、ニュートラルな音色で再現してくれますので、楽曲の様子がとても把握しやすくなっています。こういった音の分かりやすさは、モニターヘッドホンとしては王道のチューニングですし、実際に重宝します。
随分と昔の話ですが、とある楽曲のTD(トラックダウン)を見学してい時のこと。音楽プロデューサーがエンジニアに訂正の指示を出していたのですが、その指摘が詳細な内容だったためか、エンジニアは全てを把握しきれずなかなかOKが貰えませんでした。そこで、エンジニアが気分転換を兼ねてこのヘッドホンで聴いてみたところ、「なるほど」と指摘の内容が理解でき、次の再調整後にプロデューサーからOKをもらっていました。そんなエピソードがあるくらい、詳細な表現まであまさず再現してくれる、とても優秀なヘッドホンです。
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K712 PRO-Y3 |
「K702」のブラッシュアップ版として登場した製品です。後継モデルというよりも、上位モデルといったほうが良いかもしれません。ドライバーは改良された新バージョンとなり、チューニングも変更されました。いっぽうで、外観は全くといっていいほど変わらず、カラーコーディネイトのみが変更されています。それでも、大胆にオレンジ色を採用することで、既存モデルとは印象の異なる独特の雰囲気をもつ製品となりました。
音質に関しても、かなり向上しています。新バージョンとなったドライバーや、低反発ウレタン採用イヤーパッドによる密閉性向上など、いくつかの改良の相乗効果なのでしょうが、奔放な鳴り方が随分と抑えられ、落ち着きのある、それでいてダイレクト感の高い表現となりました。
歴代K701シリーズは、現在いくつかのバリエーションを入手することが出来ますが、クオリティ面でいちばん優位なのはやはりこの「K712 PRO-Y3」でしょう。音色傾向としては好みが分かれるところですが、仕事でも趣味でも使えるAKGモニターヘッドホンを1台だけ選ぶとすれば、やはりこちらが残ります。「K701」シリーズの最新版にして完成版、といっていい製品だと思います。
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K701-Y3 |
いまだ多くのファンを持つAKGの名機にしてK701シリーズの原点である「K701」が、正規輸入代理店から3年保証モデル「K701-Y3」として復活しました。K701シリーズのいちファンとして、これは嬉しいかぎり。なにせ、新品の「K701」が入手できるのですから。
オリジナルはオーストリア生産でしたが、発売が再開された製品は中国生産モデルとなっています。生産拠点が変わったことで、どのような変化が起こっているのか少々不安もありましたが、ディテールに些細な違いこそあれ、総じてオリジナルの印象が保持されているのでホッとしました。
肝心のサウンドもほとんど変わらず。女性ヴォーカルが活き活きとした、艶やかな歌声を聴かせてくれますし、グルーブ感がよく伝わるタイトな低域や、スムーズな広がりを持つ音場表現など、モニターヘッドホンとしての括りを大きく飛び越えた「K701-Y3」独自の饒舌な音楽表現を持ち合わせています。
オープンエアー型なので、イマドキのレコーディング環境で使用するのはやや難があるかもしれませんが、逆にいえば、室内用の上級ヘッドホンとして利用するにはもってこいの製品といえます。そんな製品が、当時の1/3程度の価格で入手できるのはなんともありがたい話です。
いっぽうで、オリジナルがほぼそのままのカタチで復活したため、高級ヘッドホンならでは、少々ならしにくい製品であるのも同様です。スマートフォン直ではまず無理(低音がスカスカになってしまいます)なので、据置型のヘッドホンアンプと組み合わせるのが標準です。AKG「K1500」との相性はまずまずでしたが、Chord「Hugo2」など、さらに駆動力の高い製品と組み合わせることをオススメします。
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K702-Y3 |
「K701-Y3」の改良版として、当時2つの製品がデビュー。そのうちのプロフェッショナル向けヘッドホンがこの「K702-Y3」です。
この「K702-Y3」から、miniXLR端子の着脱式ケーブルが採用されるなど、使い勝手を中心に細かい部分での改良が見られますが、基本的なスタイルは全くといっていいほど変化ありませんでした。また、その後ヘッドバンドのデザインが変更されるなど、「K702-Y3」自身も初期と現在のものではいくつかの変更が行われています。
このように、外観的にはカラーバリエーションくらいしか変わっていないK701シリーズですが、サウンドキャラクターは微妙に異なっています。「K702-Y3」は、高域の鋭さが抑えられ、エネルギッシュさがほんの少し控えめにされた(どちらもあくまでK701シリーズのなかでは、ですが)、最も客観的なサウンドに整えられています。シリーズのなかでは、いちばんオープンエアー型ぽくない音色傾向かもしれません。いっぽうで音場表現は、K701らしく自然でスムーズな広がり感を持ち合わせていますが。こういった個性を是とするか否とするかは、他のK701シリーズ製品を実際に聴き比べて決定するのがオススメです。 とはいえ、「K702-Y3」はロングセラーを続けている製品だけあって、音も使い勝手も完成度の高い製品なのは確かです。
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K612 PRO-Y3 |
「K702」(プロフェッショナル向け)や「Q701」(コンシューマー向け)の弟分としてラインナップしていた「K601」のブラッシュアップ版として登場したモデル。弟分という立ち位置はそのまま継承されたため、オープンエアー型のハウジングデザインがK701シリーズと異なっていたり、ケーブルが直出しのままとなっていたりしますが、全体のシェイプや独自のヘッドバンド構造など、特徴的な部分はシリーズ共通のものとなっています。ひと目でK701ファミリーと分かる斬新なデザインですし、いまでも古さを感じさせない独自性を持ち合わせています。
K701シリーズにおける「K612 PRO-Y3」最大の魅力といえば、やはり圧倒的なコストパフォーマンスの高さでしょう。現在のところ1万円台で購入できる唯一のK701シリーズ製品であり、それでいながらドライバーの仕様も外観デザインもほとんど変わらず。音質面では少しばかり解像感が低くなっていますが、それほどの差異はなく、充分に満足できるレベルではあります。また、サウンドキャラクターはややライトな、メリハリの深さよりも応答性の良さを重視したかの様な表現となっていますが、そのかわりにどんなジャンルの音楽も聴きやすい印象となっています(あくまでK701シリーズのなかで比較すると、ではありますが)。
何よりも、K701シリーズならではの自然でスムーズな音の広がり感は全く変わりません。それでいてこの値段は、かなりのお買い得感があります。室内で使う普段使いのヘッドホンとして、大いにオススメできる製品です。
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| K240 MKⅡ-Y3 | K240 STUDIO-Y3 |
K240 MKⅡ-Y3 |
プロフェッショナル向けモニターヘッドホン「K240 STUDIO-Y3」の発展型モデル。セミオープン型のオリジナルボディはそのままに、音質面での改良を施し、現代楽曲の特徴に合わせて低歪みとワイドレンジ化を追求。結果として、音楽ジャンルを選ばない、楽曲の善し悪しが素直に伝わってくるサウンドへと進化しました。
オリジナルと音色傾向の差異は、中域にしっかりとした厚みのある「K240 STUDIO-Y3」に対して、ストレスのない伸びやかな高域が特徴の、モニターヘッドホンらしいサウンドにシフトしていることが特徴的です。また、低域のフォーカス感も高まっていて、バスドラムやタム、ベースの音がほんの少しクリアになりました。結果として、音楽ジャンルを選ばない、楽曲の善し悪しが素直に伝わってくるサウンドとなりました。もちろん、AKGらしいスムーズな広がり感は変わらず持ち合わせていますので、モニターユースはもちろん、楽曲のオリジナリティを大切にしつつ開放的なサウンドを楽しみたいという人にもオススメできる、完成度の高い製品です。
ちなみに、外観は「K240 STUDIO-Y3」とほぼ変わらず。AKGロゴが描かれたバッジのカラーで見分けは付きますが、どちらもクラシカルなスタイルのヘッドホンですので、今となってはこれはこれで味わい深いデザインといえます。
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K240 STUDIO-Y3 |
往年の名機として名高いスタジオモニターヘッドホンが、正規輸入代理店から3年保証モデルとして復活しました。新品でこの製品が入手でき、しかも3年保証まで付いてくれるのは嬉しいかぎり。さらに、価格も(発売当初からすると)かなりリーズナブルだったりと、コストパフォーマンスも含めてさらなる魅力をもつ製品となりました。
肝心のサウンドはというと、単なるスタジオモニター然としたサウンドバランスではなく、(レコーディング時に)ヴォーカルや演奏者の気分を盛り上げてくれそうな、活気ある、エネルギッシュなキャラクターを持ち合わせています。たとえばヴォーカルは、メリハリの良い、活き活きした歌声を聴かせてくれますし、ギターなどのメイン楽器も、普段より幾分エッジのきいた、メロディアスな演奏に感じられます。セミオープン型なので、実際に録音ブースで使用するのは厳しいでしょうが、モニタールームでしたらそれほど問題なく活用できると思います。
古い設計ですので、解像感は特に優れているとはいえず、中域を重視した帯域バランスもイマドキのモニターヘッドホンとはキャラクターが異なりますが、こちらの方が聴きやすい、長時間聴いてて疲れない、という人も少なからずいると思います。また「K240 STUDIO-Y3」には後継モデルとして「K240 MKII」があり、こちらは音色傾向が少しばかり異なっていますので、2台を聴き比べて好みの製品を選ぶというのもひとつの手かもしれません。
とはいえ、往年の名機が新品で、しかもこの価格で入手できるのは大いに魅力的だと思います。
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| K872-Y3 | K553 MKII-Y3 | K371-BT-Y3 | K361-BT-Y3 | K271 MKII-Y3 |
K872-Y3 |
AKGプロフェッショナル向けモニターヘッドホンのなかでも、フラッグシップに位置する「K812-Y3」の、密閉型ハウジングバージョン。外観は「K812-Y3」とほぼ同じで、アルミダイキャスト製フレームやメッシュヘッドバンド、3Dデザインのイヤーパッド、LEMO製コネクタ採用着脱式ケーブルなど、装着感と耐久性に配慮された造りとなっています。
このように、外観はハウジング部分が密閉型となっているのみの差異ですが、音質面では独自のチューニングが施されるなど、K701シリーズはもちろん、「K812-Y3」ともやや趣が異なるサウンドキャラクターに纏められています。
伸びやかで鋭い高域、ダイレクトで躍動感の高い中域、フォーカスの良い低域など、基本的な音色傾向は「K812-Y3」と同じですが、低域の重心が低い位置にシフトして、音色もほんの少し柔らかくなっているため、想像以上に耳障りの良いサウンドとなっています。いっぽうで、密閉型らしく、ヴォーカルはグッと前に出てきてくれているなど、音のひとつひとつが把握しやすい傾向もあります。密閉型ならではの使い勝手も含めて、プロフェッショナルの環境ではこちらの方がマッチしそうです。リスニング用途がメインの場合は、シンプルで自分にとってどちらの音が好みか、聴きやすいかでチョイスして良いと思います。
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K553 MKII-Y3 |
「K553 PRO」の後継モデルで、スイーベル機構をもつ大柄な密閉型ハウジングなど、外観はコンシューマー向け製品「K550 MKIII」(絶版)とほとんど同じ。密閉型モニターヘッドホンが欲しい人はもちろんのこと、「K550 MKIII」が気になっていた人にも有力な選択肢といえます。
その「K553 MKII-Y3」ですが、最大の特長はやはり、密閉型ハウジングとは思えないスムーズで広大な音場表現を持つ合わせていることでしょう。一般的な密閉型ヘッドホンは、オープンエアー型に対して定位が近寄る傾向にあり、製品によってはウォーミーなサウンドキャラクターを持ち合わせているケースもあります。しかしながらこの「K553 MKII-Y3」は、大型ハウジングの採用をはじめとするAKGならではの音の作り込みの結果故か、左右奥行きともに大きく広がる音場を確保。わずかに中域のピークは感じるものの、オープンエアー型AKGヘッドホンと比べても遜色のない、スムーズで自然な広がり感のサウンドフィールドを満喫できます。実際、密閉型でここまでの自然な音場表現を持ち合わせているヘッドホンはほとんどありません。音場表現や定位感が気になる人や、オーブンエアー型ヘッドホン好きのユーザーにも納得して貰える、素晴らしいサウンドだと思います。
また、サウンドキャラクターとしても、オープンエアー型のモニターヘッドホン、K701シリーズと共通するキャラクターを持ち合わせています。軽やかな響きのピアノや煌びやかな音色の金管楽器、キレの良いベースやドラムなど、イマドキのモニターヘッドホンとは異なる、AKGらしい特徴を備えています。AKGヘッドホンに興味はあるけど、できれば密閉型が欲しい、という人にはピッタリの製品だと思います。
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K371-BT-Y3 |
「K371-BT-Y3」最大の魅力は、Bluetooth機能を搭載しながらも、ベースとなった「K371-Y3」と外観もサウンドもほとんど変わらないことでしょうか。特に外観は、タッチセンサー採用のおかげもあってか、電源スイッチやmicroUSBコネクタなどの有無で判別できるのみ。マッドブラックを基調としたシックでスマートな外観は、ほぼそのままのカタチで保たれています。
いっぽうで、AKGモニターヘッドホンでお馴染みのminiXLRコネクタ採用の着脱式ケーブルが(ベースモデルそのまま)用意されているので、室内では有線、屋外ではBluetoothと、環境によって使い分けることもできます。
さらに、Bluetoothヘッドホンとしてはかなりの軽量さに纏め上げられていることも魅力のひとつととなっています。触感の柔らかいフィット感の良好なイヤーパッドとも相まって、長時間のリスニング時にも問題なく活用できます。
サウンドについては、往年のAKGモニターヘッドホンとは全く異なる、フラットな帯域バランスと客観的なメリハリ表現が特徴的です。低域はフォーカスが高く、楽曲のグルーブ感が如実に伝わってきます。ディテールの描写も巧みで、ヴォーカルの様子や楽器の音色の特徴まで把握できます。既存のAKGモニターとは根本から考え方の異なるサウンドですが、ハイレゾ音源時代のモニターヘッドホンとしては、こちらの方が扱いやすいかもしれません。
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K361-BT-Y3 |
「K371-Y3」のカジュアル版といえる「K361-Y3」にも、Bluetooth搭載モデルが登場しました。こちらも、外観はベースとなったK361-Y3とほとんど変わらず、電源スイッチやmicroUSBコネクタなどの有無で判別できるのみで、マッドブラック基調のシックでスマートなデザインは全くといっていいほど変化ありません。2.5mmプラグ採用の着脱式ケーブルもそのままとなっていますので、室内では有線、屋外ではBluetoothと、環境によって使い分けることもできます。
また、Bluetoothヘッドホンとしてはかなりの軽量さに纏め上げられていることも高ポイントのひとつ。触感の柔らかいフィット感の良好なイヤーパッドとも相まって、長時間のリスニング時にも問題なく活用できます。
サウンドについては、「K371-BT-Y3」と同じく、往年のAKGモニターヘッドホンとは全く異なる、フラット志向の帯域バランスと客観的なメリハリ表現を持ち合わせています。フォーカスの高い低域、良好な解像感など、基本的には有線モデルと何ら変わるところはありませんが、兄貴分である「K371-BT-Y3」と直接比較すると、定位した場所が顔により近く、メリハリがほんの少し強めでラフな印象となっています。その分、客観性やディテール描写においては優劣が生じていますが、よく聴き比べればというレベルですので、純粋に音の好みで選んでも問題ないと思います。いずれにしろ、最新音源向けのモニターヘッドホンとしては、なかなかに出来の良い製品です。
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K271 MKII-Y3 |
「K240 MKII-Y3」の密閉型ハウジング版で、こちらもロングセラーを続けている人気モデルです。プロフェッショナル向けスタジオモニターヘッドホンとして作られた製品ですが、しっかりとした情報量が確保されていたり、密閉型とは思えない自然な広がり感を持つなど、リスニング用としても充分楽しめる懐の深さを持ち合わせています。「K240 STUDIO-Y3」や「K240 MKII-Y3」など、兄弟モデルのなかでどれをチョイスすれば良いかについては、密閉型が必要(音漏れしたくない)環境で使うのであれば「K271 MKⅡ-Y3」の一択。そうでなければ、単純に音の好みで選んでも良いと思います。どれも少しずつ音が違っているので、ユーザーがよく聴く楽曲次第でベストだと思える製品が異なってくるでしょうから。いずれにしろ、3つのどれであってもコストパフォーマンスの良い製品ではあります。
さて、決して鳴りにくくはない「K271 MKII-Y3」ですが、セミオープン型の2製品(「K240 STUDIO-Y3」や「K240 MKII-Y3」)に比べると、ほんの少しながらも、ヘッドホンアンプの駆動力を求める傾向にあります。予算と環境が許すならば、据置型のヘッドホンアンプの活用をオススメします。
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