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長年音響学の研究に従事され、現在はハーマン・インターナショナルでシニア研究員として活躍されているショーン・オリーブ博士に、AKGプロフェッショナル・ヘッドホン(以下AKGプロヘッドホン)の開発についてお聞きしました。 |
2012年頃からヘッドホンの音質を研究し始めたのですが、その成果はこの2~3年でAKGやJBLのコンシューマー向けヘッドホンに応用されています。AKGプロヘッドホンにはK371やK361から採用されました。
最も重要な要素は周波数特性です。周波数特性は、最低音~倍音を含む最高音までの可聴域全体(20Hz~20kHz)に渡り、音声や楽器の音色/色調バランスをどれだけ正確に再現できるかを示す数値なのでとても重要です。それと、大音量でも歪まないことも大切です。
快適さとフィット感がとても重要な要素です。どんなに音質がよくても、快適でなれば長時間装着してもらえません。フィット感は音質にも影響します。特にK371やK361のような密閉型モデルは、音漏れが低音の質と量に影響するため、耳の周囲をしっかりと密閉し、より優れたフィット感を実現することが重要です。
オープンエアー型のメリットの一つは、空気の流れを妨げない構造であることです。そのため低音の量は、耳の周りの密閉具合にさほど依存しません。その反面、密閉型よりも低域の再現性が劣ります。密閉型は、低域の再現性により優れ、外部ノイズからの隔離に長けています。
ハーマンカーブは、7年間の研究プロジェクトに基づき定めた、ヘッドホンにとって好ましい周波数特性です。アジア、ヨーロッパ、北米各国数百人もの音響業界/一般の方々に対して実験や検証を重ねて開発されました。実験では、幅広い年齢層かつ様々なリスニング経験を持つ男女が、ブランド/価格帯/デザインの異なる多数のヘッドホンに対してハーマンカーブを評価しました。この実験は、リスナー自身がどのブランドやモデルのヘッドホンを評価しているか分からないように二重盲検で実施されています。最多数となる64%のリスナーが、他の選択肢よりもハーマンカーブを好むと回答。次に21%が、低音がやや少ないハーマンカーブを好んでおり、残り15%は低音が多いものを好んでいました。このように、ハーマンカーブは最多数のリスナーを満足させ、それ以外のリスナーであっても低高域を少し調整するだけで簡単に満足させることができます。
K371とK361はハーマンカーブを忠実に再現しています。以前から存在するモデル(K701、K712 PROなど)は100Hzを超えるとかなりハーマンカーブに近い特性ですが、オープンエアー型なのでハーマンカーブの規定よりも低音がやや少ないです。
K371-BT-Y3 | K701-Y3 | K712 PRO |
ハーマンカーブの開発における出発点は、高性能なJBLスタジオモニター2台を設置したリファレンス・リスニングルームで、リスナーの鼓膜を基準点とした周波数特性を測定することでした。すべての録音データの99.9%はリスニングルームのスピーカーを通してミックス~マスタリングされているため、意図されたサウンドをヘッドホンで聴くためには、スタジオモニターの室内特性をエミュレートする必要があります。 音楽をヘッドホンで聴くのと、部屋のスピーカーで聴くのとでは音響心理学的な差があるため、その差をなくすために広範なリスニング実験を行い、ヘッドホンの低音と高音を調整しました。
K371-BTをプライベートでも仕事でも愛用しています。コロナ禍で昨年の3月から家で仕事をしているので、楽曲やミックスを評価する作業の他、電話/ビデオ会議のために長時間着けています。K371-BTはこれらの用途に最適ですね。他のプロ用ヘッドホンでは得られないような音質、装着感、遮音性を備え、さらに内蔵マイクもついていますから。それに有線にも対応しているので、充電を気にせずにいつでも使えます。
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