TOP  Soundcraft  Si Compact 製品レビュー② 前編

Si Compact 製品レビュー② 前編

Si Compactの実力を検証する タイトル
 
Soundcraftから昨年発売されたSi Compactは、ファームウェアのバージョンアップでさらに使いやすくなったことで、再び注目を集めている。この「Si Compact」については、前回は市来邦比古氏に製品を解説していただいたので、今回は実際に導入されているライブハウス「SHIBUYA LOOP ANNEX」のサウンドエンジニア、桑原健輔氏に、その実力をリポートしていただいた。(プロサウンド編集部)

 前編 | 後編 

 >>Si Compact 製品ページはこちら



>>レビュー記事一覧

SHIBUYA LOOP ANNEX
 SHIBUYA LOOP ANNEXは、東京・渋谷に昨年の10月1日にオープンしました。キャパシティはスタンディングで180名、座席で80名の比較的小規模のライブハウスです。ステージは幅6013mm×縦2650mm×高さ300mmで、ギター、ピアノの弾き語りや小編成のアコースティック楽器のライブがメインになっています。

 PAブースはスペースが限られていますので、卓はコンパクトで、GEQからエフェクターまでオールインワンで入っているデジタル卓にしようと考えていました。昨年の10月にオープンしたわけですが、ちょうどその頃、Soundcraftからコンパクトなデジタル卓が発売されているというのを聞いてすぐにデモ機をテストしました。Soundcraftはアナログ卓の時代から好きな音だったのと、ハード面でも信頼性が高かったので迷わず第一候補に上がりました。様々なデジタル卓がある中でも決め手となったのはデジタル卓ならではの利便性やコンパクトさの中にもアナログ卓の操作性があるところです。オペレートで必要な操作には、1ステップか多くても2ステップで辿り着きます。
 およそ7ヶ月使ってみたので(バージョンアップは4月)、Si Compactの実力をリポートしたいと思います。

サウンドエンジニアの桑原健輔氏
サウンドエンジニアの桑原健輔氏

Si Compact 24
SHIBUYA LOOP ANNEXにセッティングされた
Soundcraft Si Compact 24

TOTEM機能
 Si Compactで気に入っているところは、各バスに対応するボタンを押すだけで、そのバスへのミキシングの状況が卓上に再現できるTOTEM(トーテム:The One Touch Easy Mix)機能です。この機能によって、アナログ卓に極めて近い感覚でミックスができます。ライブハウスではFOHだけでなくモニターミックスも管理しなければならないので、ボタン一つで選択したバスのミックスがすぐにパッと見えるというのはすごく便利です。 どちらかというとアナログ卓の小さいツマミを1列ずつ見るよりも物理的に大きなフェーダーで確認できるので視認性はこちらの方がよいと感じました。SHIBUYA LOOP ANNEXではリアスピーカーを使って場所ごとに別のミックスを作ったりもするので、バスに何が送られているかというのが一目で分かるのは非常に助かります。

フェーダーグロウ・システム
 Si Compactでは、フェーダーに割り当てられている機能によって、フェーダー内部のLEDの色が変わるようになっています。コンパクトを売りにするデジタル卓ではその大きさ故にフェーダーがGEQのGAINになったり、ミックスやエフェクトのSENDになったりします。このため、ちょっと目を離した隙にフェーダーが何の モードになっているのか分からなくなったり、気付いたら操作したいところと違う場所をいじっていた、なんてことを起こしがちですが、Si Compactはフェーダー内部LEDの色分けで現在のフェーダーモードが一目で分かります。ライブハウスは本番中暗いことが多いですが、その中でも光って教えてくれるので間違うこともありません。本体が小さいデジタル卓でよく考えられた機能だと思いました。LEDの明るさももちろん調整できます。

グローバルモード・コントロール
 これはこの卓で一番感心した機能で、全チャンネルのGAIN、HPF、PANのいずれかの設定状態を常にサーフェスに表示し、その上のツマミで選択したパラメーターを操作することができます。デジタル卓だと一括して見られる情報というのがどうしても限られてきますが、特にこの3つはミキシングする上で個人的に常に表示しておきたい部分なので助かります。GAIN、HPF、PANの切り替えは一つのボタンを複数回押すタイプではなく、それぞれに独立したボタンがあり1回の操作で行なえます。

インタロゲート機能
 Si Compactは、インタロゲート機能によって、フィルターやファンタム電源、ダイナミクスなどのON/OFF状態も一度に見ることができます。
 たとえば、ファンタム電源のON/OFFボタンを長押しすると、ONになっているチャンネルのSELボタンが点灯し一括して確認できるようになっています。またその状態からON/OFFを切り替えることができます。

ACS
 ACS(Assignable Channel Strip)は、ゲートやEQ、コンプ等のパラメーターを操作するエリアです。パラメーターごとに専用のツマミやボタンを備えているため、設定を変えたいと思ったときにすぐに操作でき、直感的なオペレートが可能です。各機能がオーソドックスなアナログ卓のチャンネルストリップの信号順に並んでいるのも好感が持てます。
 
 >>  アップデートで追加された機能の印象は・・・ [後編を見る]
前編 | 後編

>>レビュー記事一覧

このサイトには、税込価格(税率10%)と税抜本体価格を併記しています。