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Si Compact 製品レビュー④ 前編

Soundcraft Si Compactの実力を検証する
 
 伝統の「Soundcraft」サウンドを継承しながら、高いコスト・パフォーマンスを実現したデジタル・コンソール「Si Compact」。軽量/コンパクトで運用性能にも優れる同機は、昨年の発売以降、世界的なヒット製品となっており、ここ日本でも多くの現場/会社が導入。待望のiPad用コントロールApp「ViSi Remote」もリリースされ、その注目度はますます高まっている。
 本誌ではここ何号かにわたって「Si Compact」のレポート記事を掲載しているが、今号では「シェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテル」(千葉県浦安市舞浜)での活用事例をレポートすることにしよう。今年4月開業25周年を迎える「シェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテル」は、802部屋の客室を擁する大規模なホテルで、大小合わせて14設けられた宴会/会議場によって、結婚式や企業イベントなどでも利用されることが多い国内有数の施設だ。
シェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテル そして「シェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテル」では昨年10月から、最も広い宴会/会議場である「THE CLUB Fuji」を中心に、新しいコンソールとして「Si Compact 32」を使用している。そこで本誌では、「シェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテル」の宴会/会議場の音響・映像・照明の管理/オペレーションを手がける電音エンジニアリング株式会社 シェラトンホテル営業所、松本洋平副所長に、新しいコンソールとして「Si Compact」を選定した理由と、その使い勝手について話を訊いてみた。(プロサウンド編集部)



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アナログ・コンソール・ライクな操作性を重視して、Soundcraft Si Compact 32を新規導入

――― はじめに、「シェラトン・グランデ ・トーキョーベイ・ホテル」の宴会場の中で最も広いという、この「THE CLUB Fuji」について教えていただけますか。

松本 「シェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテル」の中には大小合わせると計14の宴会/会議場があるのですが、その中で最も広いのがこの「THE CL-UB Fuji」になります。正餐スタイルで1,200名、立食なら2,000名まで収容できる、国内でも有数の広さを持った宴会場ですね。ここでは結婚式をはじめ、大規模な式典や国際会議、新製品の発表会といった企業イベントなど、様々な催しが行なわれています。  


Soundcraft Si Compact 32
シェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテル(千葉県浦安市舞浜)に導入された「Soundcraft Si Compact 32」。32フェーダー、32マイク/ライン入力、16ライン出力、14AUX、4マトリクス、4FXリターンという充実の仕様。「Si Compact」にはこの他にも、24フェーダーの「Si Compact 24」、16フェーダーの「Si Compact 16」がラインナップされている。

 この宴会場の特徴としては、その広さもそうですが、天井高が高い点も挙げられると思います。約6.5メートルあり、これだけの高さがある宴会場というのは珍しいのではないでしょうか。あとは使い勝手が良いのも特徴です。横幅が約50m、縦が30mと約5対3の比率で、きれいな長方形になっているんですよ。広い宴会場ですと、ヘンに細長かったり、途中に柱があったりするものなんですが、この宴会場は本当にきれいな長方形なので、ハコとしてとても使いやすいと思います。
 音響設備としては、天井にシーリング・スピーカーが埋め込まれているだけで、他のスピーカーなどは設置されていません。ですからスピーカーに関しては、必要に応じて持ち込んで使用しています。そして上方に調整室があり、そこにコンソールやアンプなどが設置してあります。
THE CLUB Fuji
シェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテルの大宴会場、「THE CLUB Fuji」。同ホテル内にある14の宴会場の中で最も広い会場で、正餐スタイルの場合は1,200名、立食の場合は2,000名収容。結婚式や企業イベントなど、さまざまな催しで使用されている
 椅子を配置した様子
シアター用に椅子を配置した様子

机と椅子を配置したときの様子
勉強会や会議など用に
机と椅子を配置したときの様子

 

―― コンソールに関しては?

松本 これまで、いろいろと変遷があるんですが、現在は直近の改修時に導入した「Soundcraft」の「K3」を使用しています。「K3」の入力チャンネル数は41chで、やはりホテルの宴会場ですと、これくらいのチャンネル数が必要になります。少ないときは3~4chで済んでしまう場合もあるんですが、生バンドが入ったり、大規模な会議などでは30chくらい使用してしまう。他には、CDやMDなどのプレーヤー類の出力や、映像機器の音声出力もここのコンソールに入力します。

 



Si Compact@THE CLUB Fiji
「THE CLUB Fuji」で「Si Compact」を
使用している様子

――― そして今回、「K3」と同じ「Soundcraft」の「Si Compact 32」を導入されたわけですが、この機種を選定された理由について教えてください。

松本 最近はデジタル・コンソールが主流ですし、そろそろ新しいコンソールを導入したいと考えたんです。最初、コンソールより先にスピーカーを導入した方がいいんじゃないかという話もあったんですが、メーカーや代理店さんにお願いして最新のデジタル・コンソールのデモ機をお借りしたところ、音質が格段に良かったんですよ。もちろん、「K3」はかなり年季の入ったコンソールなので、最新のコンソールを導入すれば音質が良くなることは分かっていたんですが、想像以上の音質の良さに驚いたんです。これは私だけでなく、他のスタッフも皆「コンソールを替えるだけで、これだけ音が良くなるのか」と驚いていました。それで、現在のスピーカーのままでも、コンソールを入れ替えるだけでこれだけ音が良くなるのであれば、まずはコンソールから導入しようという話になったんです。現在も「K3」は常設卓として設置してあり、宴席内容によって「Si Compact」と使い分けている感じですね。
 いろいろなコンソールと比較した上で最終的に「Si Compact」を選定したわけですが、一番の決め手となったのは操作性の良さですね。正直、次のコンソールもアナログにしようかなとも考えていたんですよ(笑)。しかし市場はデジタル・コンソールが主流なので、世の流れに従ってデジタルを導入することになりましたけどね。最近のデジタル・コンソールは操作性も向上しているんでしょうが、こういう現場に導入するのはまだまだ怖い印象があって。しかし「Si Compact」のデモ機をお借りして試してみたところ、本当にアナログ・コンソールのような感覚で使用することができたんです。特に液晶ディスプレイを見ることなく、ほとんどのパラメーターが表に出ているので、簡単に使用することができた。このアナログ・ライクな操作性は、「Si Compact」を選定した一番の理由ですね。
松本洋平 副所長 実際にここに入ったのが昨年の10月のことで、すぐにイベントで使用し始めました。つい先日行なわれたイベントでも、担当オペレーターはほんの少し使い方をトレーニングしただけで、「K3」同様に問題なく使いこなしていましたよ。初めて触れたその日に本番をこなすことができるデジタル・コンソールというのは、「Si Compact」の他には無いのではないでしょうか。


シェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテルの宴会場の音響・映像・照明の管理/オペレーションを手がける電音エンジニアリング株式会社 シェラトンホテル営業所、松本洋平副所長

 

――― 導入に際して比較したコンソールは、同クラスのものですか?

松本 同クラスのものや、もっと上のグレードのものとも比較しました。ハイ・グレードなコンソールは、高価なぶん機能面は充実していたりするんですが、サーフェースの操作性があまりにもアナログ・コンソールとかけ離れていて。中身は言ってみればコンピューターですので、操作性が違うのは当然なんですが、もしこういうコンソールを導入するのであれば頭を完全に切り替えなければダメだなと。それとそういったコンソールが備える付加機能が、果たしてこの現場に必要なのかということも考えました。結局は使わずに、ムダな機能になってしまうのではないかと。機能と操作性を天秤にかけた場合、この現場では操作性の方が重要だったということですね。


   
 
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