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JBL PROFESSIONAL Intellivox ビーム・ステアリング・スピーカーの可能性を探る③


 
 ■目次
 >>なぜ音の方向を動かす必要があるの?…[前編] 
 >>Intellivoxとは…[中編] 
 >>実際の設置例…[後編]  

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実際の設置例

 次に、このスピーカーによる実際の設置例を見てみましょう。写真1〜7は、ここ数年の間に筆者が実際に旅行の途中で目に付いた音響設備をスナップしたものです。

 写真1〜6は、ハリーポッターで有名になったイギリスのキングスクロス駅のコンコースの様子ですが、メインの壁面に大型の「Ivx-DS500」が6台と「Ivx-DS280」が4台あり、これらは金具等も含めて非常に上手くデザインされた設置例だったと思います。また同じ場所の2階通路の壁面には小型の「Ivx-DS115」が埋め込まれています。写真5を見てどれがスピーカーかお分かりになりますか?(笑) このスピーカーは音線軸の方向を後から変えられるため壁に対して真っ直ぐに埋め込むことができるのです。

 
<写真①>
イギリスのキングスクロス駅のコンコースに設置されている「Ivx-DS500」(壁面に黒く塗色されている長い棒のようなもの)。
この面には6台が設置されいるが、こんなに高い位置に真っ直ぐ取り付けても下方に放射できる
    
<左:写真②、右:写真③>
左の写真②は同じくキングスクロス駅のチケット売場入り口の壁面に設置されている「Ivx-DS280」。この面には4台が設置されている。
右の写真③のように、正面から見ると「Ivx-DS280」であることが分かる
<写真④>
これもキングスクロス駅のコンコースに設置されているスピーカー。
監視カメラと共に「Ivx-DS115」が上手くデザインされている
    
<左:写真⑤、右:写真⑥>
キングスクロス駅のコンコース2階にあるショップエリア。どこにスピーカーがあるでしょうか?ヒントは右の写真⑥です
 

 一方、写真7はラスベガス空港の出発ロビーにあるスピーカーです。ここでは2本の「Ivx-DS180」が背中合わせで設置されています。これも一見スピーカーとは分からず、周囲に溶け込むようにデザインされているのはさすがですね。しかもほぼ360°に渡ってカバーされています。これらの導入先はいずれも周囲の雑音が大きく残響時間も長い空間ですが、そのような条件下であってもスピーカーは明瞭にアナウンスを伝えなければならない使命を持っています。しかもスピーカー技術が進歩した昨今では「さり気なくであること」が必須となりつつあります! デザイン性と必要な性能を同時に実現する、非常に難しい命題ですが、ビーム・シェイピング型のスピーカーはそれを叶える大きな可能性を秘めています。

 筆者は、これらの写真の場所で「Intellivox」から流れるアナウンスを聞きましたが、高い明瞭性を伴った「上質の音」を体験し、設備環境における有効性を強く確認できました。それと同時に、無機的な質感の環境が増え、もっと“音空間”としての在るべき使命を重んじてほしい今の日本の設備事情にこそ、「Intellivox」のような性能を持つスピーカーが活躍するのでは、と感じました。

<写真⑦>
ラスベガス空港の案内用スピーカー。
「Ivx-DS180」2台が背中合わせで設置されており、このような設置でも音は下方に放射できる。
しかもほぼ360°のカバーが可能
終わりに
 設備音響にとってスピーカーは目立たせたくないもの。しかし性能や最適性を求めると目立ってしまうもの。設備設計に携わった方なら必ず経験するジレンマですよね。「Intellivox」はこういった時の助けとなる1つのソリューションになるのではないでしょうか。これからの音環境の改善は、同時に設置意匠を改善することになるのかもしれません。音という目には見えないデザイン画を、スピーカーという物理的な主張に縛られず自由に描くことができたら、いえ逆手にとって格好良く主張させることができたら素敵ですね。
 

 

筆者紹介
三村美照(みむら・よしてる)

音響システム設計コンサルタント。1978年「スタジオサウンドクリエーション」に入社、レコーディング・エンジニアとして経験を積む。その後、業務用音響機器の設計業務を経て、1989年から「アキト」において本格的に音響システム設計に従事、現在「M&Hラボラトリー」代表取締役を務める。仕事においては「ベストを考えない、ベストとは逆に「終わり」を意味する。私たちの仕事に終わりはない」、「常により良いものを、よりシンプルに」をポリシーに「設備の音」 を築き続けている。長居陸上競技場、新広島球場、サンケイホール、大阪フェスティバルホー ル、国立京都国際会議場、新神戸国際会館等をはじめ実績例は100件以上と多岐多数。                

Email:mhlab.mimura@gmail.com



   
 >>  なぜ音の方向を動かす必要があるの?・・・ [前編を見る]
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※この記事は「プロサウンド Vol.190 12月号(2015年11月18日)」から転載しています。

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